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2-1.新学期 << >>

退屈な中学校のおさらいのような授業ばかりの一学期を終え。

一週間ほどの休暇を置いてアカデミーは二学期、少しずつ魔術の基礎を学ぶようになった。
ホウキにまたがっての飛行訓練、火や風を扱う典型的な攻撃術、
瞑想や召還術、精霊に関する知識の習得など…。

急にやることが増えて、正直覚え切れない。
家に帰ってからもサツキ姉ちゃんを質問攻めにして、
分からないことを分からないままにすることは避けた。

宿題はアロエちゃんの家に行って一緒に解いた。
協力して問題を解くことは、別に禁止されてない。
難問をどちらが先に解くか、
競争しながらやれば、一人でやるよりも早いからだ。

一学期中チャラチャラしていたラスク君も、二学期に入って急に真面目になった。
家に帰ってから僕らの倍量のテキストに目を通して復習をして、
学校で僕らに分からない事があると積極的に教えてくれた。
14歳のシャロンさんやクララさんも、その熱心さに関心していた。

「大金持ちになるため」なんてふざけた理由だと思ったけど、
明確な目的を持っている人はそれだけ身の入れようが本気だ。

僕たち11歳の3名は、お互いをライバル視して勉強に励み、
実力テストのたびに点数を競って、一喜一憂した。

遊ぶ機会こそ減ったが、僕らは入学当初からいいお友達という関係を続けた。

そうそう、アメリア先生率いるクラスに、転入生が増えた。

みな他校からの転入生らしく、ある程度の魔法知識は持っている。
僕たちもちょうどこの学期から魔術訓練を行うので、ほぼスタートラインは一緒と言える。

元軍人というサンダースさん、妖艶な雰囲気を持つマラリヤさん、
ミュージシャンのようなルックスのタイガさん、
この3名を加えてクラスメイトは13人になった。

みなだれもが個性的、版で押したような人物はひとりも存在しない。
だからこのクラスで学ぶ授業はいつも楽しかった。

「食べる〜?」

不意にアロエちゃんがカラアゲを箸でつまんで僕の口元に寄せる。

(ちょっとこっぱずかしいな。)

と思いつつ、寄せられたカラアゲをぱくり。
後ろの視線がちょっと気になる…。

「ユウ君のお弁当いつも少ないんだもん。」

「ああ、僕はこのくらいでいいんだよ。」

「なんか女の子の食事みたい。」

「女の子って…。」

姉の作るお弁当はたしかに見た目がかわいらしい。

彼女のセンスで作ってるんだからけちはつけないけど、
はじめはこれを教室で広げるのが恥ずかしかった。
量は僕にとっては適量なんだけど。

「アロエちゃんはいつもお母さんがお弁当作るの?」

「う〜ん、最近は自分で作ってるかな。」

「そうなんだ、料理、上手なんだね。」

「お父さんとお母さんのお弁当も、たまに作るよ!」

アロエちゃんは得意げになって話す。
そういえば、両親は医者をやっているんだっけ。

2人でお弁当をつついていると、後ろからルキアさんが降りてきた。
パンをかじりながら、片手にもうひとつ何か抱えている。

「見て見て、これ買ったー。」

「あ、マジックエッグ?」

「うん。」

「何が孵るんだっけ?」

「それが分からないのがマジックなんでしょ!」

マジックエッグというのは持ち主の精神が反映された生き物が孵る魔法の卵。
得意とする能力や才能によって、何が生まれてくるか分からない。

「ずっと暖めてないといけないの?」

「そうね。少なくとも持ち主の身の回りには置いてないと、何も孵らないみたい。」

「大変なんだね。」

「でも何が生まれてくるか楽しみだわ。」

「ルキアの事だから、小悪魔かなんかが生まれてくるわ。」

後ろの段の右側の席、シャロンさんがぽそり。

「い〜や、私のことだから天使か何かが生まれてくるに違いない!」

「牙の生えた天使ね。」

「シャロン、あなたもマジックエッグ買いなさいよ。」

「無駄遣いは嫌いなの。」

ノートを広げたまま、売店のサンドイッチを食べるシャロンさん。
この2人とも、席が近いためよく話す。
年上だが、その点は特に鼻にかけず、気さくに話してくれる。

「午後の授業誰だっけ?」

「あ、アメリア先生じゃない?」

文学担当のアメリア先生。
最近は魔法書などで使われている古代文字を僕らに教えている。
レオンさんもいつしかのおしおき以来、彼女の授業は真面目に受けているようだ。

僕たちはお昼の食事タイムを終え、チャイムが鳴るまで談笑した。


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