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2-5.最優秀賞 << >>

魔法演習のあった日より3日。
そろそろ先生たちから各チームの評価を聞かされるはずだ。

演習の内容は、みな拮抗していた。
大きな失敗に終わったチームは無かったし、
みな独特のアイデアを盛り込んだ素敵なものばかりだった。

もっともそれは、生徒である僕の視点から見てそうなのであって、
先輩であるアカデミーの教師陣はまた違った見方をするだろう。

やれるだけの事はやった。
しかし結果は気になる。
できる事なら優勝したい。

「じゃ〜〜ん!!」

不意にユウの後ろから、ルキアさんが大きな声を出す。

「わっ! ルキアさん、どうしたの?」

「マジックペットが孵ったのよ。」

ルキアさんの肩には、紫のコウモリ型のマジックペットがとまっていた。
マジックペットのカラーは主の属性、すなわち得意分野を示している。
紫のカラーは理系。明朗快活なルキアの属性としては意外なカラーだった。

「かわい〜。」

隣で見ていたアロエちゃんも、マジックペットに見入っていた。

「あら、あなたの事だから絶対竜か蛇だと思ったわ。」

「人は見かけによらないのよっ!」

マジックペットは他にも赤のカラーである竜、緑色の花、
白の蛇、青の魚、珍しいものでは熊やパンダ型のものもいる。
単純なエサを食べて育ち、世話をしなければ不機嫌になるが、
通常の生き物と違って病気や死亡のリスクが存在しないため、
安易な愛玩動物として可愛がる人が多い。

卵の値段は500マジカ。
安くはないが、小屋もおもちゃも必要としないのだから、
育成するのは楽な事こと上ない。

主が寝るときは、枕の隣にでも置いておけばいいのだ。
主が目覚めるまで、マジックペットも一緒に眠っている。

「私も飼おうかな、お小遣い溜めて。」

「アロエちゃんならどんなペットが生まれるかな。」

「わからない。蛇とか魚かな?」

青は創作、赤はスポーツ、緑は芸能人などパフォーマー的な才能に目覚め、
白は生活全般を小器用にこなせる人になるという。
白の属性を有する女性は、きっと良いお嫁さんになるだろう。

談笑をしているとコツコツと、廊下を歩く音が聞こえた。
おそらく担任のアメリア先生だろう。生徒達はみな、各々の席に戻る。

ガラリ。

やはり入って来たのはアメリア先生。
今日は銀ぶちの丸眼鏡に、いつものウィザードハットを被っての登場だった。
それにしてもアメリア先生の眼鏡は高い頻度で変わる。
いったい全部でいくつ持っているんだろう?

「それじゃー、こないだの魔法演習の結果を発表します!
 泣いても笑っても審査によりつけられた点数は絶対よ。
 最下位を取ったチームの人も、これにめげずに頑張ってね。」

順位は、下位のチームから順に発表された。

最下位だったのは、無骨な演習を繰り広げたサンダース&タイガチーム。
見ていて迫力はあったが、内容が単純すぎた事と、
また安易に暴力をほのめかす内容が、アカデミーの雰囲気に反していたためか評価が低かった。

"汚い花火"と称されたレオンさんはその上の6位、
魔法により料理を作ったカイルさん&ラスク君のチームは5位、
華麗なダンスを披露したマラリヤさん&クララさんのチームは4位。
ここまではアメリア先生の口調も早かったが…。

「3位はルキアちゃん、そしてシャロンちゃんのフラワーガーデンよ。
 アイデアも良かったし、動きもとてもスムースで見ていて気持ちよかったわ。」

これを聞いてルキアさんの表情がほころんだ。
シャロンさんのほうは少し不満げな表情、どうして優勝じゃないのと言いたげだ。

「2位は、3位のルキアちゃんのチームと評価点は僅差なのだけど、
 セリオス君、そしてヤンヤンちゃんのプラネタリウム。
 とってもロマンティックで、ショーの組み立てもよくできていたわね。」

この時点で、僕たち2人の名前は出ていない。
つまり優勝は、、

「ユウ君とアロエちゃんのコンビが2位以下に大きく差をつけて1位!
 アクシデントはあったけど、魔法陣を描く石畳がボコボコになっていたのに、
 難易度の高い召還魔法を、入学したてのあなたたちが成功させた事に、
 教師陣はみんな驚いていたわ。おめでとう!」

「やったぁ!」

僕たちは、跳ねるように喜び、その場で両手の掌をたがいに合わせて心地よい音を立てた。
優勝だ。2人で懸命にやった練習が、実を結んだのだ。



「不服だっ! そもそもあの召還魔法は一度失敗していたじゃないか!」

「往生際が悪いぞレオン。3つも年下のチームが最高評価を得たんだ、素直に褒めてやれ。」

惜しくも2位に終わったセリオスさんだったが、ユウ達の演舞を認めてくれた。
まだアメリアクラスの授業では、本格的な召還魔法の授業は行われていない。
召還術は、基礎的な魔法の仕組みをある程度完全にこなせるようになってから習うのがセオリーだ。
つまり僕たちは、みんなより1学年上の内容をやってのけた事になる。

「それじゃあ、今回の評価に応じた魔法石を授与するわね。」

生徒達は、順位の高かった者から順に、アメリア先生から魔法石を授けられた。
一見するとそれはただの宝石だが、複製・偽装ができないよう、
厳重に魔法によるセキュリティーが施されていて、扱い的には硬貨や紙幣のように尊いものだ。
これを一定数集めることにより、魔法使いとしての階級が上がっていく。

今回、僕たちに与えられた魔法石は50個。
修練生の級位は8個刻みで上がっていくから、この演習だけでユウとアロエの2人は
6級分昇格したことになる。

しかし目指す階級「賢者」へは、この何十倍も努力しないといけない。
階級が上がれば上がるほど、必要な魔法石の個数が増えてゆくから、
長い目で見れば、僕たちは最初の一段目をようやく上ったにすぎない。

ホームルームの後は、通常通り授業が行われた。
この日は優勝した嬉しさからか、どの授業も楽しく受けることができた。

そして放課後…。


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