「来ないねー。」 「うん…。」 アロエは、約束通り夜祭会場の、神社の石段の下でユウを待っていた。 付き添いはルキアとシャロン。2人とも心配で、アロエに付いてあげる事にした。 放課後早めに校舎を出たアロエは、 自宅で浴衣に着替え、約束の時間よりも早めに会場に来ていた。 地域を挙げた年に一度の大イベント、アカデミー町夜祭。 出店はすでに5時ぐらいから営業しており、 この日も各地から大勢の人が集まっている。 学園の生徒達も、多数が遊びに来ていた。 「まだ校舎にいるのかなー?」 「家には帰ってないみたいだよ。」 「となるとまだ校舎かぁ…。」 「これは捕獲網とロープと粘着テープの出番ね。」 「ルキア、それ本気で持ってきたの…?」 「最終手段よ。」 「ユウ君がアロエちゃんをどう思っているかのテストでしょ?」 「気持ちよりも既成事実よ。」 「自分の恋愛観を他人に押し付けるのはダメよ。」 「冗談だってば。」 「ならいいけど…。」 「でもアロエちゃんを放っておいて、どこかで遊び呆けていたのなら許せないなぁー。」 「そうね…。」 会場の石段の下は、人ごみで溢れかえっていた。 しかし、石段の下という指定場所はここ以外にないので、 もしユウが来ていれば、見逃すことはない。 なにか理由があって、まだ来れないのだろう。 「はい、たこ焼き。」 「うわぁ、ありがとう…。」 「お腹すくでしょ?」 「うん。でも、ユウ君が来るまであまりお腹一杯食べたくないな。」 ルキアさんが、近くの出店からたこ焼きを買って来てくれた。 たっぷりとソースのかかっているこんがり焼けたたこ焼き。 お祭りという場所で食べるからこそ、本来のおいしさが分かる。 「アロエちゃん…。」 「なに?」 「来なかったらどうする…?」 「どうしようか。」 「気が済むまで待つよ。」 「健気だなぁ…。」 「今はそれしかできないから。」 「とりあえず、来ることを祈りましょう。」 いたずらに時間が過ぎてゆく。 笛の音色や神輿の掛け声などを聞いていれば気が紛れるのだが、 当のユウはいつまで待っても来ない。 「おーっすルキア。それにアロエちゃん。」 「あらレオン。」 「遊びに来たぜー。」 校庭で機体を整備していたレオン、タイガ、そしてサンダース、カイル、 居残り組が揃って到着した。ユウの姿はない。 「アロエちゃんその浴衣似合っとるわー。」 「エヘヘ、ありがとう。」 「我輩は神輿というものを担いでみたいのである!」 「遅くなりましたが僕たちもお祭りを見学して行こうと思います。」 皆、長時間の作業の後という感じだった。 レオンに至っては塗装用のペンキがべっとりとズボンに付いている。 「あれ? ラスクとユウは?」 「私達も探しているのよ。」 「校舎にはいなかったの?」 「あいつらは6時くらいにふっと居なくなったから、お祭りに行ったのかと思ったぜ?」 「えっ…。」 「グラウンドでタイムを計っていたのを見たのが最後だから、 もう校舎にはいないかと思います。」 「そんな…。」 「それじゃ、俺達は適当にその辺をうろついてるぜ。」 「あ、うん…。」 「………。」 「アロエちゃん…。」 「……。」 「私達も、3人で遊びに行きましょうか。」 「う…ひっく…。」 「あ〜あ、泣き出しちゃった…。」 「もう、彼、来ないよ…。」 「ひっく…ひっく…。」 「私、アロエちゃんと歳の近い別の男の子紹介するからさ。」 「やだ……。」 「彼のこと、忘れて今日は遊びましょう。」 「やだもん…。」 「じゃあ、どうするのよ…。」 「待つ…。」 「待つってあなた、もう2時間も過ぎてるのよ?」 「それにしてもひどいなー、ユウのやつ! あたし、今から彼の家まで行ってブン殴ってくる!!」 クラスメート達がぞろぞろと訪れる中、 とうとうユウは8時になっても姿を現さなかった。 |
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