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6-3.想いはひとつに結ばれて << >>

曲がりくねった山の麓の歩道をホウキで飛行する。
すでにお祭り会場から帰ってくる人たちが何人かいたので、
僕はホウキで飛ぶことを諦め途中から徒歩で神社に向かった。

午後8時45分。

神社の麓はほとんど人が居なかった。
みな、メインイベントの花火を見るため山頂付近に集まるからか。
石畳の左右に展開している屋台はみな営業している。
時間的に客足が少ないのか、店員さんも暇そうな表情だ。

もうすぐ階段が見えてくる。

2人の運命を決める場所。
ここにアロエちゃんがいなければ、
僕は今日、彼女と会話するチャンスが残されていない。

左側には先生達の待機しているテント。
ロマノフ先生が、酔いつぶれたアメリア先生を介抱していた。
その右側には金魚すくいの屋台。マラリヤさんとリディア先生がいた。

石段の下のベンチには…。

すごく疲れた表情のアロエちゃんがいた。
しかしその表情は、僕の顔を確認した途端明るくなった。

「ユウ君…。」

「アロエちゃん。」

すっとベンチから立ち上がり、僕に駆け寄ってくる。
嬉しそうな表情だ。その近くにルキアさんとシャロンさんの影。
どうやら2人が付き添っていたようだ。



「よかった、来てくれた。」

「ごめん、遅くなって…。」

「ううん、来てくれただけで嬉しい。」

「ずっと待ってたの?」

「そうだね、たまにこの辺ぶらぶらしながら。」

「本当にごめん…。」

「いいよ、でも、今日はこの後も、一緒にいてね。」

「うん…。」

「花火、見に行こうか。」

「いいよ。てことは、すぐに山頂まで行ったほうがいいのかな?」

「階段は人が多くて間に合わないと思うから、例の場所で…。」

「ああ、あの場所か。」

ルキアさんとシャロンさんが、僕達に手を振って会場を去った。
あの2人が付いてなければ、アロエちゃんの気も変わっていたかもしれない。

例の場所というのは、廃線の通るトンネルの事だろう。
彼女の話によれば、山頂よりもあの場所のほうが、
花火を間近に見ることができるらしい。

「なにか食べなくていいの?」

「んー、ルキアちゃんがちょくちょく食べ物買ってきてくれたからなぁ。」

「ぜんぜんお腹すいてない?」

「軽いものなら。」

「ワタアメとか?」

「あ、いいかもね。」

途中、屋台にてワタアメをひとつ買う。
大きなサイズのものだったので、2人で分けて食べるのに丁度よいだろう。

「ユウ君。」

「うん?」

「私が食べたいものが分かるの?」

「いいや。寝言でワタアメって言ってた事を思い出しただけ。」

「あー、言ったねぇ。」

「なつかしいな。」

「いつごろの事だろう。」

「新学期が始まってすぐだね。」

「あの頃か…。」

一段一段を、踏みしめる。
これから踏み出すスタートラインに向かって、一歩一歩。
歩幅を合わせて、二人三脚のように…。

山の中腹から、別ルートに入る。
崩れた廃線のトンネル。
とっておきの場所は、この先にある。

だが、昼間に来たときと違って、怖さが段違いだ。
僕はアロエちゃんの手を取り、一歩先を歩いた。

洞窟の構造はよく覚えているが、何も見えない。
暗闇の中で握る、彼女の手の平。
その手は暖かく、やわらかく、そして愛おしかった。

彼女が僕に、一歩寄る。
そして僕も、彼女の掌を自分の身体に寄せる。

不思議と嫌悪感を感じない。
どうして今までこうしなかったんだろうという疑問すら感じる。
お祭りの賑わいのせいだろうか。
それとも、今日が特別な日だからだろうか。
トンネルの先に光が差す。


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