[BACK]


6-5.秋空に二つ影 << >>

レース当日。

結局、僕とラスク君の戦闘機は、なにも手が加えられてないまま。
参加した6チーム中、成績は決して良いとはいえない4位。
基礎魔力の高いサンダースさんのチームが圧差をつけて優勝した。
アロエちゃん達はビリから2番目。
しかも途中、駆動部分が作動不良を起こしてリタイアした。
だいたい予想通りのレース展開だった。

その前日、日曜日は彼女と過ごした。
同棲をしている恋人同士ようように、朝から晩まで。
一緒にお風呂に入り、ご飯を食べ、同じベッドに入って眠った。

具体的になにをしたわけでもないのだが、
今は彼女と一緒にいてあげることが、なによりの罪滅ぼしであり、
僕にできる、唯一の愛情表現だ。

学校内では、僕達は付き合い始めた事を公言し、
席は互いに隣同士をキープした。

変わったことはといえば、
アロエちゃんが僕の仲良くしている男子グループと遊び始めたこと。
足して2で割ったような結論だが、ベターな選択だろう。

学期末は実力テストと、ホウキを使った飛行能力のテストがある。
乗り物のレース結果が悪かったので、ここは良い成績を残しておきたいところ。
僕はアロエちゃんと、練習を兼ねて毎日の通学をホウキに乗って行った。

秋の始まり、これから少し寒くなる。
空はうろこ雲に覆われ、山は紅葉を始める。

「桜並木も秋一色だね。」

「来年の春までお預けでしょ。」

「そうそう、今日神社の下で芋煮会やってるの。」

「芋煮会? なにそれ。」

「ユウ君ってつくづく都会っ子だね…。」

「どうせ去年まで親元で家族と暮らしてましたよ。」

「食べに行けばわかるよ。」

「それじゃあ、その後神社に登ってホウキの練習ね。」

「うん。」

校門から神社の麓まで2人きりのホウキレース。
夕映えの秋の空、飛び立つ影が2つ。
スピードを合わせ、空の上で手を繋ぐ。

僕達は卒業まで、この思い出溢れる並木道を、2人で通った。



星明りに幸福を(初恋編)─完─  


[PREV] [TOP] [NEXT]