レース当日。 結局、僕とラスク君の戦闘機は、なにも手が加えられてないまま。 参加した6チーム中、成績は決して良いとはいえない4位。 基礎魔力の高いサンダースさんのチームが圧差をつけて優勝した。 アロエちゃん達はビリから2番目。 しかも途中、駆動部分が作動不良を起こしてリタイアした。 だいたい予想通りのレース展開だった。 その前日、日曜日は彼女と過ごした。 同棲をしている恋人同士ようように、朝から晩まで。 一緒にお風呂に入り、ご飯を食べ、同じベッドに入って眠った。 具体的になにをしたわけでもないのだが、 今は彼女と一緒にいてあげることが、なによりの罪滅ぼしであり、 僕にできる、唯一の愛情表現だ。 学校内では、僕達は付き合い始めた事を公言し、 席は互いに隣同士をキープした。 変わったことはといえば、 アロエちゃんが僕の仲良くしている男子グループと遊び始めたこと。 足して2で割ったような結論だが、ベターな選択だろう。 学期末は実力テストと、ホウキを使った飛行能力のテストがある。 乗り物のレース結果が悪かったので、ここは良い成績を残しておきたいところ。 僕はアロエちゃんと、練習を兼ねて毎日の通学をホウキに乗って行った。 秋の始まり、これから少し寒くなる。 空はうろこ雲に覆われ、山は紅葉を始める。 「桜並木も秋一色だね。」 「来年の春までお預けでしょ。」 「そうそう、今日神社の下で芋煮会やってるの。」 「芋煮会? なにそれ。」 「ユウ君ってつくづく都会っ子だね…。」 「どうせ去年まで親元で家族と暮らしてましたよ。」 「食べに行けばわかるよ。」 「それじゃあ、その後神社に登ってホウキの練習ね。」 「うん。」 校門から神社の麓まで2人きりのホウキレース。 夕映えの秋の空、飛び立つ影が2つ。 スピードを合わせ、空の上で手を繋ぐ。 僕達は卒業まで、この思い出溢れる並木道を、2人で通った。
星明りに幸福を(初恋編)─完─ |
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